ALCパネルとは?ほかの外壁材と徹底比較

ALCパネルは、その高い機能性から、戸建て住宅はもちろん、中高層のビルやマンション、商業施設に至るまで、幅広い建築物で採用されている、非常に信頼性の高い外壁材です。
しかし、その一方で、ALCパネルが持つ性能を長期にわたって維持するためには、その特性を正しく理解し、適切な時期に、適切な方法でメンテナンスを行うことが不可欠です。メンテナンスを怠れば、せっかくの高性能な外壁も、その価値を大きく損ない、やがては建物の寿命そのものを縮めてしまうことにもなりかねません。
この記事では、ビル・マンション塗装の専門家として、ALCパネル外壁の全てを、オーナー様の視点から徹底的に解説していきます。
ALCパネルとは
ALCパネルとは、「Autoclaved Lightweight aerated Concrete」の頭文字を取った略称で、日本語では「高温高圧蒸気養生された軽量気泡コンクリート」と訳されます。
その名の通り、主原料であるセメント、珪石、生石灰などに、発泡剤であるアルミニウム粉末を加えて混ぜ合わせ、内部に無数の気泡を作りながら固めたコンクリートの一種です。
そして、最後に「オートクレーブ」と呼ばれる巨大な釜に入れ、高温・高圧の蒸気をかけて養生することで、安定した結晶構造を持つ、非常に強固で耐久性の高いパネルが完成します。
この特殊な製造工程により、コンクリートでありながら水に浮くほどの「軽量性」と、内部の気泡がもたらす高い「断熱性」「遮音性」、そして無機質な原料から生まれる優れた「耐火性」を兼ね備えた、高性能な外壁材として、1960年代から日本の建築業界で広く採用され続けています。
ALCパネルの種類
ALCパネルは、その形状や厚み、表面のデザインによって、いくつかの種類に分類されます。建物の規模や用途、デザインに応じて、最適なパネルが選択されます。
形状の違い
パネルの形状は、大きく分けて2種類あります。一つは、主に低層の住宅などで使われる「薄形パネル」です。厚さが35mm~75mm程度で、比較的軽量なため、施工性に優れています。
もう一つは、主に鉄骨造のビルやマンション、工場などで使われる「厚形パネル」です。
厚さが100mm以上あり、内部に鉄筋マットが組み込まれているため、非常に高い強度を誇ります。
外壁材としてだけでなく、床や屋根、間仕切り壁としても使用できるほどの性能を持っています。
厚さの違い
ALCパネルの厚さは、JIS規格によって定められています。
前述の通り、薄形パネルは主に35mm、50mm、75mmといった厚さが一般的です。
厚形パネルは、100mm、125mm、150mmといった、より厚いものが使われます。
この厚みは、建物の強度や、求められる断熱性、耐火性能などによって、構造計算の上で決定されます。
一般的に、パネルが厚くなるほど、断熱性や遮音性、耐火性といった性能は向上します。
表面加工の違い
ALCパネルの表面には、様々なデザイン加工が施されています。
平らで滑らかな「フラットパネル(平パネル)」のほか、岩肌のような重厚感のある「岩石調パネル」、規則的なラインが入った「ラインパネル」など、多彩な意匠が用意されています。
これらのデザインパネルを組み合わせることで、建物の外観に豊かな表情と、高いデザイン性を与えることが可能です。
ALCパネルのメリット
ALCパネルが、多くのビルやマンションで採用されるのには、他の外壁材にはない、多くの優れたメリットがあるからです。
メリット①軽い
コンクリートでありながら、内部に無数の気泡を含んでいるため、その重量は普通コンクリートの約4分の1程度しかありません。
この「軽量性」は、建物全体への負担を軽減し、基礎工事のコストを抑えることに繋がります。
また、地震の際には、建物が重いほど揺れが大きくなるため、軽量であることは耐震性の向上にも大きく貢献します。
メリット②火に強い
ALCパネルの主原料は、セメントや珪石といった、燃えることのない無機質です。
そのため、非常に高い耐火性能を誇り、建築基準法で定められた耐火構造の認定も取得しています。
万が一、火災が発生した場合でも、壁の内部に炎が燃え広がるのを防ぎ、有害なガスや煙も発生しません。入居者の命と財産を守る、極めて安全性の高い外壁材といえます。
メリット③断熱性が高い
パネル内部に均一に含まれる無数の気泡が、空気の層となって熱の伝わりを抑制します。
その断熱性は、普通コンクリートの約10倍ともいわれ、外気の暑さや寒さが、室内に伝わるのを効果的に防ぎます。
これにより、夏は涼しく、冬は暖かい、快適な室内環境を保つことができ、冷暖房の効率も向上するため、省エネルギー、ひいては光熱費の削減にも繋がります。
メリット④遮音性が高い
高い断熱性をもたらす内部の気泡は、同時に、音を吸収し、遮る効果も発揮します。
外部の騒音(車の走行音など)が室内に侵入するのを防ぎ、また、室内の生活音(テレビの音や話し声など)が外部に漏れるのも軽減してくれます。
これにより、入居者のプライバシーを守り、静かで快適な居住空間を実現します。
メリット⑤耐久性が高い
高温高圧のオートクレーブ養生によって作られるALCパネルは、寸法安定性に優れ、長期間にわたる反りや収縮といった変形が、極めて少ないのが特徴です。
また、主原料が無機質であるため、木材のように腐ったり、シロアリの被害に遭ったりすることもありません。
適切なメンテナンスを行えば、50年以上にわたって建物を守り続ける、非常に高い耐久性を誇ります。
メリット⑥調湿性に優れている
ALCパネルの気泡構造は、湿気を吸収したり、放出したりする「調湿性」も持っています。
これにより、室内の湿度を一定に保つ効果が期待でき、結露の発生を抑制します。
結露は、カビやダニの発生原因となり、アレルギーなどを引き起こす健康上のリスクにも繋がるため、この調湿性は、入居者の健康的な暮らしを守る上でも、重要な性能といえます。
メリット⑦地震に強い
前述の「軽量性」に加え、ALCパネルの施工方法も、耐震性の高さに貢献しています。
ALCパネルは、建物の構造躯体(鉄骨など)に対して、ロッキング構法やスライド構法といった、揺れを吸収・追従する特殊な方法で取り付けられます。
これにより、地震のエネルギーが直接パネルに伝わるのを防ぎ、パネル自体の脱落や損傷を最小限に抑えることができるのです。
メリット⑧デザインの自由度が高い
フラットなパネルから、重厚感のある岩石調まで、多彩な意匠パネルがラインナップされており、建物のコンセプトに合わせて、様々な外観デザインを実現できます。
また、塗装によって色も自由に変えることができるため、将来的なリニューアルの際にも、建物のイメージを一新することが可能です。
ALCパネルのデメリット
多くの優れたメリットを持つALCパネルですが、その性能を維持するためには、知っておくべきデメリットや、注意点も存在します。
デメリット①水を吸いやすい
ALCパネルの最大の弱点、それは「吸水性が高い」ことです。
内部に無数の気泡を持つ構造上、表面の塗装が劣化して防水機能が失われると、スポンジのように雨水を吸い込んでしまいます。
パネルが水分を含むと、冬場の凍結によって内部から破壊されたり(凍害)、中性化が進んで内部の鉄筋が錆びたりと、強度が著しく低下します。
この弱点を補うため、表面の防水塗装と、パネル間の目地を埋めるシーリング材の定期的なメンテナンスが、絶対に不可欠となるのです。
デメリット②施行の工程が多い
ALCパネルは、その性能を100%引き出すために、専門的な知識と技術に基づいた、精度の高い施工が求められます。
特に、パネル間の目地に行うシーリング工事は、建物の防水性を左右する最も重要な工程です。
ALCパネルの特性を理解していない業者が施工すると、シーリングの不具合から、すぐに雨漏りに繋がってしまいます。ALCパネルの施工・補修は、必ず経験豊富な専門業者に依頼する必要があります。
デメリット③左官仕上げや石張りには適さない
ALCパネルの表面に、モルタルのような左官材を塗ったり、重い自然石を張ったりする仕上げは、基本的には推奨されていません。
パネル自体が動くことを前提とした構法のため、硬い仕上げ材は地震などの揺れに追従できず、ひび割れや剥落を起こす危険性が高いためです。
仕上げは、追従性の高い塗装で行うのが一般的です。
デメリット④初期費用が高い
ALCパネルは、高性能な建材であるため、材料費そのものが、一般的な窯業系サイディングなどに比べて高価です。
また、専門的な施工技術が必要となるため、施工費も割高になる傾向があります。
ただし、その後の断熱性の高さによる光熱費の削減や、耐久性の高さによるメンテナンスサイクルの長さなどを考慮すると、長期的な視点で見れば、決してコストパフォーマンスが悪いわけではありません。
ALCパネルの価格相場
ALCパネルの価格は、パネル本体の費用と、施工費用を合わせて考える必要があります。
パネル本体の価格は、厚さやデザインによって異なりますが、1平方メートルあたり7,000円~12,000円程度が目安となります。これに、取り付けの施工費が加わります。
また、新築時ではなく、メンテナンスとして塗装工事を行う場合の費用相場は、1平方メートルあたり2,500円~5,000円程度です。
これには、足場代や高圧洗浄、シーリングの補修費用、そして塗装費用(下塗り・中塗り・上塗り)が含まれます。
3階建ての小規模なマンション(外壁面積500㎡)であれば、おおよそ125万円~250万円程度が、全体のメンテナンス費用の目安となります。
ALCパネルとほかの外壁材の比較
ALCパネルの特徴を、より深く理解するために、他の代表的な外壁材と比較してみましょう。
金属系サイディング
ガルバリウム鋼板などの金属板に、断熱材を裏打ちした外壁材です。ALCパネルと同様に軽量で、耐震性に優れています。
シャープでモダンなデザインが特徴ですが、硬いものが当たるとへこみやすく、傷がつくと錆びやすいという弱点があります。
耐火性や遮音性においては、ALCパネルに軍配が上がります。
樹脂系サイディング
塩化ビニル樹脂を主原料とした外壁材です。非常に軽量で、耐候性・耐水性に優れ、錆びたり腐ったりすることがありません。
シーリングを使わない施工方法のため、目地のメンテナンスが不要という大きなメリットがあります。ただし、日本ではまだ普及率が低く、対応できる業者が限られるのが現状です。
木質系サイディング
天然の木材を加工した外壁材です。木の温もりある、ナチュラルで高級感のある質感が最大の魅力です。
しかし、天然素材であるため、水を吸いやすく、腐食や変形のリスクがあります。
美観と耐久性を維持するためには、3~5年周期での頻繁な塗装メンテナンスが不可欠であり、維持コストは高くなります。
モルタル
セメントと砂、水を練り合わせた素材を、職人が現場で塗りつけて仕上げる、伝統的な湿式工法です。
サイディングのように継ぎ目がない、シームレスで重厚感のある仕上がりが特徴です。
デザインの自由度も高いですが、乾燥収縮によるひび割れ(クラック)が発生しやすいという大きな弱点があります。
タイル
粘土などを高温で焼き固めた外壁材です。
焼き物ならではの高級感と、傷や紫外線に非常に強く、塗装メンテナンスが基本的に不要という、圧倒的な耐久性が魅力です。
しかし、材料費・施工費ともに非常に高価であり、地震の揺れで剥離・落下するリスクもあります。
ALCパネルの外壁メンテナンスが必要な劣化症状
ALCパネルの性能を維持するためには、劣化のサインを見逃さず、適切な時期にメンテナンスを行うことが重要です。
以下のような症状が現れたら、専門家による点検を検討しましょう。
コケ・カビ
外壁の表面が、緑色や黒っぽく変色している状態です。
これは、塗装の防水機能が低下し、壁の表面に湿気が滞留している証拠です。
美観を損なうだけでなく、アレルギーの原因となったり、塗膜をさらに劣化させたりする原因にもなります。
チョーキング
外壁を手で触ったときに、チョークのような白い粉が付着する現象です。
これは、紫外線の影響で塗料の成分が分解され、粉状になったものです。
塗膜が劣化し、防水性が失われ始めている、最も分かりやすいサインの一つです。
塗膜の剥がれ
塗膜が、素地から浮き上がったり、ペリペリと剥がれたりしている状態です。
ここまで劣化が進行すると、塗膜による防水機能は完全に失われており、ALCパネルが直接、雨水にさらされることになります。
パネルの吸水を防ぐため、早急な対処が必要です。
コーキングの亀裂
パネルとパネルの継ぎ目を埋めている、シーリング(コーキング)材に、ひび割れや肉痩せが見られる状態です。
この目地部分は、建物の防水における「生命線」です。
ここに隙間ができると、そこから直接、壁の内部へと雨水が侵入し、雨漏りの最大の原因となります。
塗装面よりも先に劣化することが多いため、特に注意深くチェックすべきポイントです。
ひび割れ
ALCパネル自体に、ひび割れ(クラック)が発生している状態です。
髪の毛のような細いヘアクラックであれば、塗装でカバーできる場合もありますが、幅の広い構造クラックの場合は、雨水が侵入し、内部の鉄筋を錆びさせてしまう危険性があります。
Vカットなどの適切な補修を行った上で、塗装する必要があります。
ALCパネルの外壁メンテナンスをする際のポイント
ALCパネルのメンテナンスを成功させるためには、その特性を理解した上で、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。
外壁表面を防水塗料で保護する
ALCパネルの最大の弱点である「吸水性」をカバーするため、メンテナンスで用いる塗料には、高い「防水性」と「透湿性(内部の湿気を外に逃がす性能)」が求められます。
弾性塗料など、ALCの動きに追従できる、ひび割れに強い塗料を選ぶことも重要です。
塗料の選定を誤ると、せっかく塗装をしても、すぐに不具合が発生してしまう可能性があります。
シーリング材の点検も必ず行う
塗装工事を行う際には、必ず、パネルの目地にあるシーリングの状態も点検し、必要であれば補修工事を同時に行うことが絶対条件です。
いくら壁面をきれいに塗装しても、防水の要であるシーリングが劣化していれば、そこから雨水が侵入してしまいます。
塗装とシーリングは、必ず「セット」でメンテナンスを行うもの、と覚えておきましょう。
定期的な点検とメンテナンスを実施する
ALCパネルの優れた性能を、50年、60年と維持し続けるためには、計画的なメンテナンスが不可欠です。
一般的に、10年~15年周期での、専門家による点検と、塗装・シーリングのメンテナンスを行うことが推奨されます。
深刻な劣化が発生する前に、予防的なメンテナンスを行うことが、結果的に建物の寿命を延ばし、長期的な修繕コストを抑える、最も賢明な方法なのです。
ALCパネルは外壁を守ってくれるが定期的なメンテナンスも必須
今回は、高性能な外壁材である「ALCパネル」について、その特徴からメンテナンス方法まで、網羅的に解説しました。
ALCパネルは、オーナー様の大切な資産である、ビルやマンションの価値を、長期にわたって守り続けてくれる、素晴らしいパートナーです。
しかし、そのパートナーの健康を維持できるかどうかは、オーナー様の適切な判断と、信頼できる施工業者との出会いにかかっています。
私たちカメダ総合塗装は、創業以来、数多くのビル・マンションにおけるALCパネルの塗装・改修工事を手がけてきた、専門家集団です。
ALCパネルの特性を誰よりも深く理解し、その性能を最大限に引き出すための、最適な塗料選定と、精度の高い施工技術に、絶対の自信を持っています。
「ご所有の建物の外壁の状態が、今どうなっているのか、専門家の目で見てほしい」 「長期的な視点に立った、最適な修繕計画のアドバイスがほしい」
もし、そうお考えでしたら、ぜひ一度、株式会社カメダ総合塗装にご相談ください。
耐久性やデザイン性に優れた塗装を通じて、快適な住空間を実現するお手伝いをいたしますので、お気軽にご相談ください。
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